「――っく……!」
かたく握り締められた短剣は、わずかの躊躇もなく、フィオナ姫自身の胸に、深々と突き立てられていたのだ。
「フィオナ!」
駆け寄ったジュジュの目前で、フィオナ姫のまぶたが急速に閉ざされてゆく。かつて学んだ作法のとおり、横に寝かされた切っ先は肋骨の間をすべり、心臓を貫いていた。アルマデル王家の姫君としての最期の誇りを、少女は見事に果たしたのだ。
(…お母さま、ごめんなさい…。先に、お父さまのもとへまいります。どうか、天国でまた一緒に、幸せに暮らせますように――)
そして、フィオナ姫の魂は、穏やかな眠りの彼岸、いかなる邪悪の手も届かない永遠の安息の地へと、ゆるやかに旅立っていった。
――そのはずだった。