ぼんやりとした薄暗がりに包まれ、少女の意識が夢うつつにたゆたっていた。身体は石のように冷たく硬直し、指一本動かすこともできない。
――私は…、たどりつけたのだろうか…。お父さまたちが、待っている場所に――
 四肢はしびれたように感覚が無い。しかし周囲を取り囲むひんやりとした圧迫感から、どうやら自分が狭い箱――ちょうど棺を思わせる空間――の中に、横たわっていることが感じ取れた。
(…じゃあ、もうお墓の中なのね、きっと…。誰かが、お葬式や、お祈りを済ませてくれたのかな――まさか、あの魔女がそんなことをするとは、思えないけど…。お母さまは、どうなったのかしら――
――なかなか驚かせてもらったわ、フィオナ――
 まどろみに遠く響く呼び声。誰かが自分の墓に向かって語りかけているのだと、少女は思った。
「見かけや評判より、ずっと行動的なお姫様なんだね。ますます、気にいったよ♡」
 しかしそれは、まぎれもなくフィオナ姫自身の耳が、鼓膜の振動によって聴きとった音声である。死者の耳に声が伝わることがあるのだろうか。混乱と恐慌が意識を弾けさせ、姫は自分がまぶたを痛いほど見開いた感触を、はっきりと認識した。